税務会計ニュース

注目の事業承継税制 ~平成30年税制改正~
 

 

 
税制改正大綱が閣議決定されました!

 与党が12月14日に策定した平成30年度の税制改正大綱について、本日22日付で閣議決定されました。

 年収850万円超の会社員への所得増税やたばこ増税で3700億円税収が増える一方、事業承継税制の見直しなどで900億円減税となります。(下表参照)



  ほぼ全ての税制改正が実現した平年度ベースでは差し引き2800億円規模の増税となります。

 森林保護や観光インフラ整備の財源とする27年ぶりの新たな国税も創設され、個人の増税が際立つ一方、法人税は賃上げや設備投資を進める企業に税制上の措置を講ずるという内容でした。



「事業承継税制」が大幅に拡充されました!

 今回の税制改正大綱の減税項目の中で、目玉の一つとなっており減税規模の大きいものが「事業承継税制」です。

 中小企業経営者の高齢化が進んでおり、今後5年間で30万人以上の経営者が70歳(平均引退年齢)に達すると言われているにも関わらず、その半数以上が事業承継の準備を終えていないという状況であり、このままでは中小企業の廃業の増加により地域経済に深刻な打撃を与える恐れがある、まさに待ったなしの課題となっています。


 ここで「事業承継税制」について簡単に説明します。

 事業承継税制とは、「世の中小企業のオーナーが、次世代に会社の株式を渡し、事業を承継(バトンタッチ)するのであれば、その会社の株式(財産)に係る相続税や贈与税を大幅に減免しますよ」という趣旨のものです。


 実はこの制度、さかのぼること平成21年の税制改正で作られたのですが、適用を受けるための要件がとても厳しく、これまでは利用者が全然いませんでした。

 そんな状況の中、「このままでは業績の良い会社が廃業してしまい、それこそが国にとって大きな損失である」という切迫した危機感のもと、今回の改正で10年間の特例措置として「事業承継税制」が抜本的な拡充を行うことになりました。

改正ポイントは?

 施行日後5年以内に承継計画を作成して贈与・相続による事業承継を行う場合…


①納税猶予対象の株式数の制限を撤廃(改正前は発行済議決権株式総数の3分の2)


②納税猶予割合を100%に引き上げ(改正前は80%)

 中小企業の経営者から親族などの後継者が株式を引き継ぐ場合、相続税が全額猶
予されます。

 親族でなくても使うことができます。


③雇用確保要件の緩和(改正前は雇用の8割維持)

 事業承継後の5年間平均で、8割以上の雇用を維持するという要件を満たす必要がありましたが、この要件が緩和されるようです。


④複数の後継者に対する贈与・相続も対象に

 納税猶予を受けられる事業承継パターンを拡大するものです。

 現行では、1人の経営者から1人の後継者への株式の譲渡を想定していますが、複数人から株式の譲渡を受けた場合や、複数の後継者が株式の譲渡を受けた場合も納税猶予の対象となります。



まとめ

 この制度を使えば、これまでの事業承継対策のように意図的に会社の利益を一時的に減らして、株価を圧縮し、贈与を行うといった方法をとる必要がありません。

 国も大幅にバックアップしてくれています。

 良い制度だと思いますので、是非積極的にご活用いただければと思います。